可愛いあの人は高校生
校舎の中に入ると、加藤くんはいろんな場所に案内してくれた。

美術室、理科室、音楽室など・・・・。
あたしの脳は思い出そうとするたびに痛むばかりだったが加藤くんの表情を見ていると自分が苦しくて思い出したいと強く思った。


そして次に体育準備室に連れて行ってくれた。
「ここ、覚えてねえ?」
加藤くんは楽しそうに笑った。

「・・・わかんな・・・。」
あたしがうつむかないように加藤くんはあたしが言い終わらないうちに話し出した。
「ここな、平山っていう先公がいてな、そいつに奈々が襲われかけてそんで俺が助けたの。」


そう言われてもあたしの頭は反応しない。

それでも加藤くんは優しく微笑んでくれた。
だけどその微笑はどこか寂しそうに見えて・・・・。


思い出したい。
思い出せない。
思い出したい。
思い出せない。

・・・・苦しいよ。



あたしが悲しそうな表情に気付いたのか加藤くんはあたしの手をまた引っ張ってくれた。
「次行こうぜ!」

その明るさは嬉しかったけど・・・でも哀しかった。



< 80 / 98 >

この作品をシェア

pagetop