新選組異聞 幕末桜伝
「邪魔するぜ。」
土方はそれだけ言うと、制止の声も聞かず奥へ奥へと歩みを進めた。あの男がいる場所へ近付くにつれて、酒の匂いが鼻をかすめる。まだ、朝だというのに引っ掛けているらしい。
一番奥の襖の前に立ち、乱暴に開けると、真っ赤な顔をした男が、猪口を片手ににやりと口角を上げて笑った。
「何だよ、珍しいじゃねぇか。壬生浪士組 副長の土方さんが俺のとこに来るなんざ。」
「芹沢さん。あんた、死神って信じるか?」
土方は単刀直入に切り出す。
芹沢と呼ばれた男が僅かに眉を顰(ひそ)めたのが解った。
「お前さん、まさか俺を疑ってんじゃねぇだろうな。」
「まさか。そんな訳ないじゃないですか。考えすぎですよ。
…ただ、あんたが、どんな獣を飼おうが勝手ですが、壬生浪士組に迷惑がかかるようなマネだけは控えて下さいよ。」
土方がそう言うと、芹沢はさも愉快そうに喉の奥を鳴らした。
「死神の噂なら俺も知ってらぁ。どこの誰かは知らんが、一度手合わせ願いてぇもんだな。」
その答えを聞いて、土方はすぐに部屋を後にした。あまり長居したい場所ではない。
土方はそれだけ言うと、制止の声も聞かず奥へ奥へと歩みを進めた。あの男がいる場所へ近付くにつれて、酒の匂いが鼻をかすめる。まだ、朝だというのに引っ掛けているらしい。
一番奥の襖の前に立ち、乱暴に開けると、真っ赤な顔をした男が、猪口を片手ににやりと口角を上げて笑った。
「何だよ、珍しいじゃねぇか。壬生浪士組 副長の土方さんが俺のとこに来るなんざ。」
「芹沢さん。あんた、死神って信じるか?」
土方は単刀直入に切り出す。
芹沢と呼ばれた男が僅かに眉を顰(ひそ)めたのが解った。
「お前さん、まさか俺を疑ってんじゃねぇだろうな。」
「まさか。そんな訳ないじゃないですか。考えすぎですよ。
…ただ、あんたが、どんな獣を飼おうが勝手ですが、壬生浪士組に迷惑がかかるようなマネだけは控えて下さいよ。」
土方がそう言うと、芹沢はさも愉快そうに喉の奥を鳴らした。
「死神の噂なら俺も知ってらぁ。どこの誰かは知らんが、一度手合わせ願いてぇもんだな。」
その答えを聞いて、土方はすぐに部屋を後にした。あまり長居したい場所ではない。