新選組異聞 幕末桜伝
壬生浪士組 筆頭局長である芹沢鴨(せりざわ かも)は、何かと問題の多い男だった。

壬生浪士組(みぶろうしぐみ)は近藤派と芹沢派に二分されており、近藤派は、好き勝手に暴挙を働く芹沢派に頭を痛めていた。そんな事もあり、今回の事件も芹沢派の仕業ではないかと土方は考え、いの一番に乗り込んだのだ。

しかし、先ほどの芹沢の態度から察するに、どうやら土方の思い違いのようだ。


「ぜってぇ、あいつだと思ったのによ。」

土方は畳の上にどかっと座ると、煙管を銜え、吐き捨てるように愚痴る。


「土方くん、あまり芹沢さんを刺激するような真似は…。」

山南が諭すように言う。


「機嫌良さそうに酒飲んでたぜ。多分、覚えちゃいねェだろうよ。」

土方の答えに、部屋にいた近藤と山南は、やれやれといった様子でため息をついた。
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