新選組異聞 幕末桜伝
「私に刀の握り方を教えたのは、他でもない、近藤局長、あなたですよ。あなたの為にやっと刀を振るう事ができると思ったのに、女の私はこの組織に必要ないと言うのなら、自らの手で認めさせるしかないじゃないですか。私だって戦える。
何度かこうして一人で巡察に来ましたけど、この通り、ほら、無傷です。」
そう言ってさくらは、見てみろと言わんばかりに両手を広げる。
「副長助勤なんて、そんなものになりたい訳ではないけど、私にも戦う理由を下さい。金色の髪をした死神の噂は、すでに市中へと広がっている。
今は皆が出歩く事のない夜中を選んで徘徊してますが、何だったら、昼間に出歩いてもいいんですよ。そうしたら、死神の正体が私だって、すぐに解りますよね。金色の髪をした人間なんて、滅多にいないんだから。」
自分に役職を与えろという、脅しにしか聞こえなかった。確かに、強さは申し分ない。さくらが敵と対峙しても無傷でやり過ごしているというのがその証拠だ。
しかし、土方はそんなつもりで彼女のここへ連れてきた訳ではない。辛い思い出しかない故郷に留まるよりも、新しい場所で、自由に過ごして欲しいという願いがあった。近藤の言う通り、人斬りにする為などでは、毛頭ない。
だから、さくらの処遇を悩んではいたものの、役職を与えずに来たのだ。まさか、実力行使で訴えてくるとは夢にも思わなかった。
こうなってしまった以上、いつさくらの存在が敵方にばれるかは、もう時間の問題。金色の髪は、否が応でも目立ってしまう。故郷へ帰す訳にも行かなければ、屯所から一歩も出さず、匿い続ける事も困難。不本意とは言えども、さくらの要求を呑むしか道はなかった。
何度かこうして一人で巡察に来ましたけど、この通り、ほら、無傷です。」
そう言ってさくらは、見てみろと言わんばかりに両手を広げる。
「副長助勤なんて、そんなものになりたい訳ではないけど、私にも戦う理由を下さい。金色の髪をした死神の噂は、すでに市中へと広がっている。
今は皆が出歩く事のない夜中を選んで徘徊してますが、何だったら、昼間に出歩いてもいいんですよ。そうしたら、死神の正体が私だって、すぐに解りますよね。金色の髪をした人間なんて、滅多にいないんだから。」
自分に役職を与えろという、脅しにしか聞こえなかった。確かに、強さは申し分ない。さくらが敵と対峙しても無傷でやり過ごしているというのがその証拠だ。
しかし、土方はそんなつもりで彼女のここへ連れてきた訳ではない。辛い思い出しかない故郷に留まるよりも、新しい場所で、自由に過ごして欲しいという願いがあった。近藤の言う通り、人斬りにする為などでは、毛頭ない。
だから、さくらの処遇を悩んではいたものの、役職を与えずに来たのだ。まさか、実力行使で訴えてくるとは夢にも思わなかった。
こうなってしまった以上、いつさくらの存在が敵方にばれるかは、もう時間の問題。金色の髪は、否が応でも目立ってしまう。故郷へ帰す訳にも行かなければ、屯所から一歩も出さず、匿い続ける事も困難。不本意とは言えども、さくらの要求を呑むしか道はなかった。