新選組異聞 幕末桜伝
「さくら。二度と勝手な真似はするんじゃねェ。

…処遇については、これから考える。それまでは大人しくしとけ。」

土方の答えに、さくらは満足したように口角を上げた。それは、笑顔と呼べる代物ではなかったが、その意地の悪い笑顔のような表情を最後に、さくらはそれからは、土方の前では一切、表情を変える事はなかった。

そして、それから二日後。椿さくらには、新たに作られた“総長”という役職に就く事になる。誰かを従えるでもなく、誰かに従うでもない、特攻専門の役職。土方らが苦し紛れにつけた特に発言権もないただの肩書だった。


それでも、さくらは満足だったようで、総長という役職を告げると、ただ一言、ありがたく頂戴致しますと、頭を下げた。


「椿さくら、必ずや壬生浪士組のお役に立ってみせます。」


こうして、新選組の前身である壬生浪士組の総長が誕生した。
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