新選組異聞 幕末桜伝
それから、筆頭局長であった芹沢派が一掃され、新選組という名を賜り、山南が総長という局長のすぐ下の地位についても、さくらの立場が揺らぐ事はなかった。山南とは同じ総長という名であっても、別のものとして扱われ、他の隊士からは副長助勤の隊長格と同じものとして認識されていたからだ。

誰を従えるでもないさくらは、自由奔放に任務をこなし、誰よりも手柄を上げ、新選組として名を上げていく。

人斬り集団と呼ばれるようになったのは、さくらのせいではないかとも言われるくらいに。


人の命を躊躇なく奪うその姿は、まるで夜叉のようで鬼と呼ばれている土方ですら恐怖を覚える。


どこで道を間違ったのか。


こんなはずではなかったと言っても、もう遅い。

あの氷のような瞳には、何も映らないのだから。


だけどどうか、心までは夜叉にならないでくれよと、土方は思う。心を殺して鬼になるのは、俺だけで充分だと。
< 21 / 30 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop