新選組異聞 幕末桜伝
「さくら!ちょっと話がある。」

芹沢の背を見送った後、少し不機嫌な様子で沖田がさくらの前に現れ、腕を掴みずんずんと歩き出した。掴まれた腕が痛くて、思わず顔を顰(しか)める。沖田は人気のない裏庭へ連れていき、立ち止まるとさくらを真正面から見つめた。


「ごめん…。」

沖田が何を言おうとしているのかは解る。さくらは、今にも泣きだしそうな沖田の顔を見て、思わず謝罪の言葉を口にした。


「何かあったらどうするんだよ…!

さくらが強いのは解ってるけど、複数の浪人相手に一人で対峙するなんて、死ににいくようなものだ。今まで無傷でいられたのは、ただ運がよかっただけだよ。はっきり言って俺は、さくらに総長っていう地位が与えられた事、全然納得してないから。」

沖田の静かに怒る声を聞きながら、久しぶりに怒られたなとさくらは思った。


全てを失ったあの日から、誰もが腫れ物に触れるかのように扱ってきたからだ。自分を心配してくれている沖田の言葉に、少しだけ心が温かくなるが、さくらは全てを素直に受け取る事はできなかった。

どうしてもある感情が邪魔をしてしまう。

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