新選組異聞 幕末桜伝
「総司はいいよね。その若さで一番隊の隊長だもん。私は、どれだけ強くても、女だっていうだけで、みんなと一緒に戦う事もできない。だったら、私のここにいる意味って何?

…誰も答えてくれないなら、自分で見つけるしかないでしょう?私はみんなのお荷物になんてなりたくない。私も戦えるんだって、自分の力で認めさせるしかなかった。

総司なら、解ってくれるよね?」

沖田は何も答えなかった。

いや、答えられなかったと言った方が正しい。


さくらの力は、恐らく側で見てきた沖田が一番よく知っている。組織の編成で、さくらの名がなかった事を不思議に思ったのも事実だったが、女の子だし仕方がないかと沖田ですら考えた事を、さくらが気付かない訳もない。実力勝負のこの世界で、その実力を見てもらえさえしない理不尽さ。彼女の主張を聞き、隊に居場所を求めて、あのような行動に出たのも理解できるような気がした。


「心配してくれてるのは解るけど、これからは好きにさせてもらう。止める権利は総司にだってないから。私は、壬生浪士組 総長として自分の信じる正義を全うする。」

そう言ってから立ち去るさくらを、沖田は言葉もなく見送る。沖田は、若いが実力を買われ、一番隊隊長という地位を与えられえたが、さくらは、申し分ない実力を持ちながらも、女だというだけで、壬生浪士組に名を連ねる事すら許されなかった。


きっと、沖田がさくらの立場であれば、同じ事をしただろう。

そう考えると、ますます何も言えなくなった。

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