新選組異聞 幕末桜伝
「さくら。総司から全部聞いたぜ。お前、俺に話した時は、殺らなきゃ自分が殺されてたから斬ったって言ったよな?浪士共が一般人に手ェ出してたなんて、一言も聞いてねェぞ?」

「…それは、聞かれなかったので、言いませんでした。」

今にも殴りかかりそうな勢いで責める土方に、さくらは表情を変える事無く、冷静に言う。その答えは、沖田が心配した通り、火に油を注ぐものだった。


「てめェ…。」


部屋についた沖田はさくらの胸倉を掴んでいる土方を見て、止めに入ろうとするが、それを別の隊士に制される。その人物は、僕に任せてと、にっこりと笑った。


「土方くん。やり過ぎだよ、そのくらいにしておきなさい。さくらちゃんも、言葉が足りなかったようだね。」

男が柔らかな声で二人の間に入ると、土方は舌打ちをして、部屋から出て行った。さくらは、乱れた着物をすでに直している。

表情一つ変えずに。

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