謝罪のプライド
「新沼さんが教えてくれてから、私、今自分が求められてることがわかってきたっていうか。仕事楽しいって思えるようになったんです。そうしたら、九坂さんも優しくなったっていうか。……ギャップ萌えっていうんですか? 私、本気で九坂さんのこと好きになっちゃったかも」
「はぁ?」
ちょ、ちょっと待った。
ダメだって、ダメ。
「だから、頑張ります。応援してくださいね、新沼さん」
「えっ、ちょっ、やっ」
「あ。九坂さんだ。九坂さぁーん、おはようございますー!」
確かに数メートル先に浩生がいる。目ざといな。あの色のスーツの人間なんてたくさんいるわよ。
私に一緒に行きましょうーって言ったはずの美乃里は、そのまま駆け出して行って浩生の隣に収まった。
浩生はそっけなく……でもなく普通に美乃里と並んで話している。
私には全然気づいていないみたい。
つか、本気って何。
ダメだっつの。浩生は売約済みだよ。
……でもダメだというタイミングを逃してしまった。
美乃里が浩生にフラれるのを待つ……なんてそれもどうなの?
もし美乃里が本気なら、私から浩生と付き合ってることを伝えないと、彼女を傷つけてしまうんじゃない?