謝罪のプライド
*
自信ありげでワガママそうだな。それが彼の第一印象だ。
彼の外見は女子社員にはそれなりに人気のあるものだったけれど、私には苦手意識のほうが先に立った。威圧されるのは好きじゃない。
出会ったのは、二年ほど前。
当時私は、ヘルプデスク要員としての要件を満たすべく、各部署で基礎知識を学ぶ為に研修をしていた。
コンピュータの内部構造をより深く理解するために、と技術部へと配属され、そこで私を指導してくれたのが噂の“謝らない男”・九坂浩生だ。
「オフィスへの新機種導入に行くぞ、ついてこい」
大した説明もないまま、いきなり連れて行かれたのは客先だ。社員用のコンピュータを三十台ほど新しいものに入れ替えるという仕事。なのに人員は浩生と私だけで、私は全く戦力にならない。
そして浩生は連れてきたくせに私に何の説明もしなかった。黙々と設置作業を続けていく彼の脇でのいたたまれなさったらない。
「あの、……私は」
彼が五台目を仕上げた後で言った。
「なんだ?」
「私にも出来そうな作業があると思いました。一人でやるより二人でやるほうが速く終わります。指示を出してください」
「ほう?」
「机上の研修なら受けてます。見てるだけならそれと一緒になってしまう。私にも触らせてください」
時折様子を見に来ていた会社の人は、オロオロと私たちを見ていた。
いかにも新人と言った風体の女が、自分たちが買った機械を壊すことを恐れていたのか、上司に食い下がっていく私に単純に驚いたのかは分からない。
自信ありげでワガママそうだな。それが彼の第一印象だ。
彼の外見は女子社員にはそれなりに人気のあるものだったけれど、私には苦手意識のほうが先に立った。威圧されるのは好きじゃない。
出会ったのは、二年ほど前。
当時私は、ヘルプデスク要員としての要件を満たすべく、各部署で基礎知識を学ぶ為に研修をしていた。
コンピュータの内部構造をより深く理解するために、と技術部へと配属され、そこで私を指導してくれたのが噂の“謝らない男”・九坂浩生だ。
「オフィスへの新機種導入に行くぞ、ついてこい」
大した説明もないまま、いきなり連れて行かれたのは客先だ。社員用のコンピュータを三十台ほど新しいものに入れ替えるという仕事。なのに人員は浩生と私だけで、私は全く戦力にならない。
そして浩生は連れてきたくせに私に何の説明もしなかった。黙々と設置作業を続けていく彼の脇でのいたたまれなさったらない。
「あの、……私は」
彼が五台目を仕上げた後で言った。
「なんだ?」
「私にも出来そうな作業があると思いました。一人でやるより二人でやるほうが速く終わります。指示を出してください」
「ほう?」
「机上の研修なら受けてます。見てるだけならそれと一緒になってしまう。私にも触らせてください」
時折様子を見に来ていた会社の人は、オロオロと私たちを見ていた。
いかにも新人と言った風体の女が、自分たちが買った機械を壊すことを恐れていたのか、上司に食い下がっていく私に単純に驚いたのかは分からない。