謝罪のプライド
だけど、浩生はまだ結婚する気はないんだって。
男の三十一歳ってまだまだ自由でいたい年齢なのかもね。
私だって、まだ二十七歳。仕事をしている女ならば結婚してなくても普通の年齢だ。
だから焦ることなんて無いの。
「……ただ、まだ結婚とかは考えてないんだって」
心のなかで思った言葉は、半分以上を伝えられなかった。
最初の一言を、小さな声でしか言えなくて。
その後は喉につかえたまま出てこない。
察した亜結が背中をなでてくれる手が優しくて、ちょっと泣きたくなった。
「まあ、男は呑気なもんなんですよ。いつまでも悠長に構えているというかね。ある日突然思い立ったら、きっと初音ちゃんが驚くくらい強引になるかもしれないよ?」
優しいな、清水さん。
笑いながら、それが大したことじゃないように装ってくれる。
「だといいな」
頷いて、私はお酒を一気に煽った。
優しい二人にこれ以上心配かけたくない。
しんみりした話なんてやめやめ。
亜結がいい人に出会えてよかった。
今日はそっちをネタに美味しいお酒を飲もう。