謝罪のプライド
「あ、ごめん。あの」
『飲み会だって言ったよな、俺』
声が固い。
もしかして怒った?
『ちょっとぉー。浩生さん、誰と電話してるんですかぁ』
割って入るのは美乃里の声。
ちょっと、なんで浩生さんだなんて呼んでんのよ。
『うるさいな、っておい』
『私がいるのにぃー。酷い。ちょっとぉ、誰だか知りませんけど、いいところなんで邪魔しないで下さい!』
美乃里の声が大きくなったかと思うと、そのまま電話を切られる。
おそらく電話を奪われたんだろう……と予想はつくけど。
なんなの、何なのよ!
だけど、こちらからはもうかけられない。
浩生の冷静な声に、背筋が凍りつきそうだった。
そこからしばらく、かけ直してきてくれることを期待して待って。
三十分が過ぎた頃、諦めてシャワーを浴びた。
それでも、電話は扉の前に置いたまま。
シャワーを終え寝る準備が出来ても、電話はならないし家の扉も開かない。
眠たいはずなのに不安で寝れない。
時計の秒針の音がひどく耳障りだ。
まんじりともしないまま、私はその夜を明かした。