謝罪のプライド

圧倒されたまま、その日の仕事を終えた帰り道。
ちょっと一服しようと言った彼にしたがって、チェーンの喫茶店に入った。

私はレモンティーで彼はアメリカンコーヒー。
すぐにやって来たそれに砂糖も入れずに、彼は落ち着いた物腰で口をつけた。

荒っぽい口調に対して行動は落ち着いているな、なんて妙に観察してしまう自分がいる。


「ご苦労さん」


労われるなんて思ってなくて、若干の感動を抱きながら私は素直に感想を告げる。


「いえ、勉強になりました。凄いですね、九坂さん」


三十台を二時間強。二人でやったとは言え、私はほとんど役には立っていないはずだった。
この成果はひとえに彼の成し得たものだ。
彼は私の感嘆に、意地悪そうな笑みを浮かべた。


「アンタも凄かったよ。いい足だった」

「へ? やあっ、何見てたんですか!」


尊敬を一気に壊された感覚で、私は真っ赤になって彼を睨みつけた。
すると彼は楽しそうに声をあげて笑い出した。


「はは。いいね、新沼。可愛いとこもあんじゃん」

「か、かわ……っ」


たった一日。

だけど、それだけで私は簡単に彼に落ちた。
 
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