謝罪のプライド
「いらっしゃいませ」
迎え入れてくれた店員さんは、数家くんと目配せすると私達を奥の小上がりの方に連れてきてくれた。
三畳ほどのスペースで六人は座れそうな席だ。
「ねぇ、二人なのに小上がりって申し訳ない」
「いいよ。この方がゆっくり話せるし。障子閉めれば人から見られないし、気にすることないよ」
「でも」
「今日は俺ちゃんとお客様だもん。しっかり予約したんだからいいんだよ」
なおも反論しようとすると笑われてしまう。
「ホント気遣い屋だよね。新沼さんは人のことばっかり」
「そんなことはありません!」
それがあんまりにも優しい顔だったので、勝手に顔が赤くなってしまう。
私はそれ以上突っ込めなくなって黙ってしまった。
「もう料理は頼んであるから。飲み物だけ頼もうか。新沼さんはビールが好きなんだよね?」
「……なんで知ってるの」
「過去三回ともビールばっかりだったから」
「……なんでそんなこと覚えているの」
だから記憶力半端ないって。ある意味ではものすごく怖い人だ。
「嬉しかったんだよ。熱々の鍋に合うのはやっぱりビールだって俺も思ってたから」
そう言われると、……嬉しくなっちゃうじゃないの。
数家くんは接客上手だ。
劣等感を感じているところを持ち上げてもらえるのは凄く心が軽くなる。