謝罪のプライド
翌日からも、彼は私を客先に連れて行ってくれた。
その日は大掛かりなシステム構築で、九坂さん以外にもエンジニアはたくさんいた。
九坂さんだけではないことに緊張して、沢山のケーブルを繋いでいく彼らになかなか質問が出来なかった。
この間はあんなに充実してたのにな、寂しく思いつつ後ろに下がっていると、九坂さんが私の腕をぐいと掴む。
「ほら、ちゃんと見ろ、新沼。わかるか?」
「え? えと、すみません。今は何を……」
「これがサーバー。バックアップをとるためのサブマシンがこっち。ネットワーク構築の知識はどれくらいある?」
「け、ビジネス研修で習った程度です」
しかも、半分くらいしか理解出来なかった。研修で学んだ中でもここが一番の苦手分野だ。
でもこの場では言いづらい。
九坂さんは、私の歯切れの悪さに気づいていたんだろう。探るようにじっと見つめた後そっけない口調で言った。
「テキストよりも実物を見たほうが覚える。分からないことはすぐに聞け。後からでは教えない」
「はい!」
そう言われて、ようやく胸の内に抱えていた疑問が声に出せる。
私が聞いていたことは初歩的なことだったし、他のエンジニアの中には作業が遅れることに不満そうな人もいた。
それでも九坂さんは、全く意に介さないように私に時間を割いてくれた。
とても嬉しくて、ますます九坂さんを尊敬した。
でもだからといって苦手分野をすぐに克服でくるわけじゃない。
あんなに作業の手を止めて教えてもらったことが、半分くらいしか理解できない自分が悔しかった。