謝罪のプライド
あんなこと言っていたのに、自分は最後まで謝ったな。
ホント浩生とは正反対。
……でも、数家くんの『ごめん』は優しい武器だ。
人を安心させて、自分の懐に引き込むための。
闇雲に言っているようだったけれど、そうじゃない。
彼には彼の、謝罪のプライドがあるんだ。
そして浩生が謝らないのもまた、彼なりの謝罪のプライドなんだろう。
彼はそのために、自らを極限まで高めようとする。
じゃあ私は……?
すぐに謝ってしまうのは、嫌われたくないから。
それでいて、思い通りにならない彼に苛立って当たってしまっていた。
数家くんみたいにプライドのある謝罪も出来てなければ、浩生みたいに自分を高める努力もしてない。
“浩生が好き”っていうこの気持を大切にしたければ、私はもっとちゃんと浩生と向き合わなきゃいけなかったのに。
「やっと、……見えてきた」
私がしなきゃいけないこと。
なにもかも終わりになる前に、やれることはちゃんとある。
【明日、ゆっくり話したいの。就業後、時間をください】
意気込んで、何日かぶりに浩生にメールを打つ。
返事がくるまで他に何も手につかないほど落ち着かなくて。
一時間位してからようやく来たのは【分かった】という返事。
それを見た途端、安堵からかものすごい眠気に襲われて、そのまま意識が飛んでしまった。