謝罪のプライド
「浩ちゃん、女の子相手にそんなに威圧しちゃダメよ」
「威圧なんてしてねーよ。おばちゃんのカツ丼奢ってやるとか、俺かなり優しーんですけど?」
「はいはい。ありがとね」
店員さんとは親しいのだろうか。
いつも怖い九坂さんが、なんだか子供扱いされているのがおかしくて、笑ってしまう。
「……やっと笑ったな」
「え?」
「頭ガチガチになってるんだろ。さっきのアンタ、もう泣きそうになってたぞ」
「なっ、泣きそうになんてなってません!」
すぐ反論したけど、顔はそれが図星であると肯定してしまっていただろう。
九坂さんはそんな私を一瞥すると、グラスのビールを一気に煽った。
そして自分で二杯目をつごうとするので、慌ててビール瓶を奪いお酌をする。
九坂さんは、泡を含めてグラスの縁まできっちりいれられたグラス越しに、念を入れるように言った。
「あのな。間違うなよ」
「え?」
「お前は、ヘルプデスク要員なんだ。誰も技術者と同じ知識を持てなんて言ってない」
一瞬九坂さんの言ってることが分からず、私は首を傾げた。
「でも」
「はい、お待ちどう」
私の反論は カツ丼を持ってきたおばさんに遮られる。タレの香りが鼻孔をくすぐり、否応なしに意識はカツ丼の方へいってしまった。