謝罪のプライド
「今日そういえば部屋汚いよ」
「だったらどうした」
「幻滅しない?」
「もともと幻想とか抱いてない」
ポンポンと返ってくる返事には私への拒絶の色は全くない。
なんだ。何を言っても、この手が離されることはなかったんだ。
私今まで、頑張りすぎてたんだなぁ。
部屋に入り、すぐにでも抱きしめてくる浩生を何とか押しとどめる。
「ちょっと待って。今日汗かいたし、先にシャワー浴びたい」
「別に気にならねぇし」
「私が気になるの」
「じゃあ一緒に入るか」
「無理!」
ユニットバスにかよ。狭いって。
「……もう待ってられねーから」
手首を押さえられ、反論は彼の唇に飲み込まれる。
「んっ、んん」
ブラウスのボタンが外され、外気が火照りを奪っていく。
結局、シャワーをあびることは叶わずに、私の衣服は部屋の入り口に落とされた。
入り口の明かりが微かに入り込む寝室に抱きしめられたまま連れて行かれ、ベッドに落とされたかと思うと噛み付くようなキスが全身を伝っていく。
抵抗する気持ちなんて、もうこの時点で手放していた。
いつもより濃い彼の体臭を存分に吸い込んで、私の体は熱くとろけ出す。
「好き、……浩生、好き」
うわ言みたいに告げた言葉を、彼は笑顔で受け止めたかと思うとご褒美のようにキスをくれる。
右手を伸ばして、彼の頬に触れた。
汗ばんだ肌がしっとりと私の手と馴染んだ。
「浩生も言って」
こんな風に懇願したのは、二年も付き合って今日が初めてのように思う。
「……愛してるよ」
そして彼の返事も、今までで初めての言葉だった。