謝罪のプライド
「お前、式場おさえるのどれだけ苦労するか分かってる? 仕事している以上、土日しかねぇんだぞ? まさか一件だけ見て決めるってわけにもいかねぇだろ。それに、日取りだって土日じゃなきゃだめだ。その内大安吉日がどのくらいあると思ってるんだよ。今から探したって一年後だ」
「え? そうなの?」
「結婚する友達とかたくさん居るんだろ? ちゃんとリサーチしておけよ」
じゃあ浩生はリサーチしたのかよ。
と一瞬言い返したくなったけど、きっとしているのだろう。
謝らない男の下準備は完璧だ。
……ってことは。
浩生は結婚のことはずっと念頭に入れていてくれたってことだ。
しかも、こんなにリアルに。
なんだかもう。感情任せにイライラしていた自分がバカみたい。
「式場探しつつ、挨拶に行く。俺んちは反対するわけねぇから、適当でいい」
「なんでそんなこと分かるの」
「母親は俺が十五の時に死んでるんだ。父親はその後何年かして再婚して、他の家庭を持ってる。今となってはあまり会わないんだ。大抵のことは事後承諾でいい。『かつや』のおばちゃんが母方のおばさんで、まあ、あの人が母親代わりみたいなもんだ」
サラリと言ったけど、結構重い話だよ?
「初めて聞いたよ、そんなの」