謝罪のプライド
「言う必要がないと思ってた。変な同情はいらないし、実際俺は何も不幸じゃない。親は俺が成人するまでちゃんと育ててくれたし、母親がいなくなってからも俺にはおばちゃんがいた」
「でも」
「人に頼らなくても、俺は生きていける」
彼は人に頼らないために、どれだけの努力をしてきたのだろう。
膨大な知識、判断力、行動力、ミスを犯さない注意深さ。
何もかもを自分でやらなければという感情が、彼にそれを身につけさせたのか。
それこそ、彼を“謝らない男”と言わしめるまで。
「……頼らなくてもいいから、甘えてみてよ」
ぽろっとそんなことを言ったら、彼は呆れたように笑った。
「それはもうしてる」
その反応に、目で疑問を訴えると彼は照れたのか、私の頭を布団ごと胸に抱え込んだ。
ムワッと熱気が広がり、顔がほてってくる。
「甘えてなきゃ、夜中にいきなり飯を出せなんて言わないって」
照れたようなくぐもった声は、彼の心音と共に私の耳に届く。
今まで彼が私に見せてくれていた全ては、私だけのものだったのだと、この時初めて気づいた。