謝罪のプライド


 結局、朝食を食べたあと、乗り気になった浩生に引っ張られるように式場を幾つか見学した。

清水さんが言ってた、『ある日突然思い立ったら、きっと初音ちゃんが驚くくらい強引になるかもしれないよ?』って言葉は本当だったのかも。

動きに無駄がなさすぎて、ビビるくらいだ。


 そして最後に、私達は【U TA GE】に行った。

『仲直りしたら一緒に鍋食べに来てよ?』という言葉を鵜呑みにするのはどうだろう、と思いつつ、最後に話したのが電話だったことも気になっていて。


「あの男は気に入らないけど、この店の鍋は旨いよな」

「数家くんだっていい人だよ」

「いい人は彼氏のいる女に言い寄らねぇだろ」

「またそういうこと言う……」


言い争いをしながらお店に入ると、早速迎えてくれたのは数家くんだ。
私達を見つけ、一瞬目を丸くしたかと思うとくしゃりといつもの笑顔を作る。


「いらっしゃいませ。新沼さん、来てくれたんだ。嬉しいなぁ。さあ、どうぞ」

「……俺もいるけどな」


後ろでボソリと浩生が呟く。

いじけた声を出さないで。
とりあえずポーカーフェイスでお願いしますよ。


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