謝罪のプライド
亜結がくれたラウンドブーケを胸に抱きしめて、その香りを胸いっぱいに吸い込んだ。
「次は、私の番だね」
「……だな」
そのまま寄り添いながら歩いて、アパートまで戻る。
ピンヒールとようやくお別れできて、私はホッとしてベッドに倒れ込んだ。
「誘ってるか?」
「違う。疲れたの」
気を抜くと本気でひん剥かれそうで恐ろしい。
胸元を抑えながら横になって足のしびれを癒していると、ポンと紙袋が投げつけられた。
「なに?」
「開けてみろ」
袋の中にあったのは、見覚えのある鶴の刺繍の入ったケース。
ドキドキしながら開くと、そこには前とは違うダイヤモンドの指輪が入っていた。全体的に出っ張りが少なくなり、前は無かったはずの小さなダイヤモンドが両脇に一つずつついている。
「どうしたの、これ」
「指輪のリフォームってのがあるだろ。あれで直した」
「お母さんの指輪を? 大事なものじゃない」
「でも、あのデザインは初音には似合わねーだろ。古臭いし」
「でも」
「死んだ人間は死んだ人間だ。思い出を初音に背負わせようなんて俺は思わない。死んだおふくろだって新しくして使ってやったほうがきっと嬉しいだろう」
「浩生」
浩生がベッドの前に膝たちになったので、私も起き上がって姿勢を正す。
「初音にやるよ」
言葉と同時に、指に差し入れられたリング。