謝罪のプライド

やっぱり入っていってください。
そう言えなかったのは、私のつまらないプライドからだ。
汚い部屋を見せたくない。しっかりものの私を見てほしい。
そして、あなたに好かれる自分で居たかった。

ずっと見送っていると電話が鳴る。
一緒に仕事をしている時に必要だったから携帯番号の交換はしていた。


『いつまで突っ立ってるんだ。さっさと中に入れ』

「は、はい!」


彼の小さな気遣いに、ようやく彼のキスを信じられるような気持ちになった。



 結局、彼と体を重ねたのはそれから二週間後だ。
思いの外遅くなったのは生理が重なったからだけど。
その期間中、私は彼が心変わりするんじゃないかってビクビクしていた。

でも結果として、彼はずっと私の準備ができるのを待っていてくれた。
それは体目当てじゃないってことだよね? って思えて。
ようやく安心できた私は彼にすべてを委ねた。


「いつから私のこと好きですか?」


重ね合いながらの問いに、彼は「さぁ」と笑う。


「根性あるなって思ってから気に入ってはいたよ」


彼はなかなか好きだと言ってくれない。
それでも、私は彼が与えてくれる愛情表現に、とても満足していたのだ。

< 27 / 218 >

この作品をシェア

pagetop