謝罪のプライド
3.謝る男
翌朝のヘルプデスク。私は朝からコールセンターのセンター長と電話中だ。
「ええ。坂巻さんを推薦された理由を聞かせていただければ」
『もしかして何か失敗でもやりましたか?』
センター長は五十代の女性だ。落ち着いた物腰で気配りができるので、良く部下の面倒を見ている。
今回、美乃里に白羽の矢がたったのは、『誰か一人ヘルプデスクへ昇格出来そうな人員はいないか』との問いかけへのセンター長の返答結果からだった。
「失敗というか。ちょっと責任感がないかなって思うことがあって」
『ああまあ、そういうところは少しありますね。でも私があの子を押したのは先ずその性格のタフさと人懐っこさです。苦情がくるような部署に一番必要なのって結局その辺りじゃないですか?』
技能もいるけどね。とは思っても言わないでおく。
実際、センター長もマニュアルに書いてあること以外のことはからっきしなのだ。
彼女は完全にコールセンターという部署の特性をわかっている。必要なのは客の要望を社内にまわしていくことであり、自分たちが解決するのではないのだ。
「分かりました。ありがとうございます」
『いえ。よろしくおねがいしますね。話してみるといい子ですよ』
電話を切って、そうか? と疑念を抱く。
始業十分前になっても来ないのはいい子か?
普通新人だって自分で思ってるならもうちょっと早く来るんじゃないの?
それとも、こんなこと考えちゃう時点で私がお局様なの?