謝罪のプライド


「技術部は最初。来週からよ。あそこは厳しいから、根性据えていかないとダメよ」

「大丈夫です! 楽しみが一つでもあれば頑張れるしー」


じゃあ昨日落ち込んでいたのは、この部署に楽しみが一つもないからかよ。

心のなかで毒づき、でも確かになぁ……と周りを見やる。
部長は頭が涼し気な五十代だし、他の三人も体格的にどっしりとした三十代後半から四十代後半の垢抜けない男性軍。
皆、能力的なもので言えば優秀であろうけれど、ときめきというものからは程遠い部署だといえるだろう。


「あとさ、今週の金曜。坂巻さんの歓迎会と一時お別れ会をするから空けておいてね?」

「あーはい。この面子とですよねぇ」

「まあね。部署内の飲み会だもの」

「はーぁい。わかりましたぁ」


乗り気じゃないのはアリアリと分かる。気持ちはわかるけど、それ表に出しちゃダメでしょ?


「……坂巻さん、ポーカーフェイスって知ってる?」

「知ってますよ?」

「じゃあ社交辞令は?」

「知ってますよう。どうしたんですか? 新沼さん。あ、もしかして合コンとかに誘って欲しかったんですか? いやーん。新沼さんポーカーフェイスだから全然分からなかったぁ」

「……使い方はそれであってるけど、私は別に合コンには行きたくない」


朝から脱力。この子、本当に他の部署回って大丈夫なのかしら。
心配になりつつも、先ず基本的なところは私が教えなければならない。
ヘルプデスクの業務をこなしながらそれをやるのは結構大変で、私は一日中ため息をつきっぱなしだった。



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