謝罪のプライド
お通しが運ばれてきて、注文を告げる。
今日は海鮮鍋だ。お互い一人暮らし、こういう時に食べないとなかなか魚は取れない。
「ああでも久し振りだね。亜結。なんかいいことあった?」
「え? なんで? 分かる」
「うん。なんかいつもと雰囲気違うよね。彼氏出来たとか」
続けてそう言うと彼女は照れたように頬を染める。
おおっと大当たり!
やっぱり色っぽくなった時はそうだよね。
「うん。彼氏ってか。あのね、初音」
「うん」
もったいぶった言い方に若干イライラしながら、先を促す。
今日の亜結は妙にもじもじとしていて、違和感がある。いつもは竹を割ったような物言いをするのに、となかなか次の言葉を告げない彼女に不安になってきた。
「なんか悪いこと?」
眉を寄せて聞いてみると、爆笑される。
「ヤダ。なんでいきなり反転すんのよ」
「だって亜結がなかなか言いださないから!」
「違うの。あのね、……実は私、結婚します」
コホンと一度咳払いをしてから続けられた言葉に目が点になる。
ちょっと待った。
半年前に会った時には彼氏も居なかったよね?
なにそれ、いきなり結婚てどういうこと。