謝罪のプライド
「ご注文ですか?」
「ビール二つ追加。……ね、数家くん。この子覚えてる?」
「え?」
数家くんは愛想笑いを浮かべたまま、亜結の顔をまじまじと見る。
「えっと、あーごめんなさい。初めてのお客様かなと思うんですが」
「やだもー、高二の時一緒だった七尾亜結。私と良く一緒にいたんだけど。覚えてない?」
数家くんは、もう一度じっくりと亜結を見た。そして顔を綻ばす。
「ああ! そうか、七尾さんだ。すっかり綺麗になって分からなかったです」
「いやー私も数家くん、分からなかったよー」
社交辞令っぽく挨拶を交わす二人を横目に、じゃあ待てよ、私のことがすぐわかったのは私が成長してないからかいとか思ってしまう。
だけど次にビールを持ってやって来た彼は、「再会を祝して」とフライドポテトをサービスしてくれたので、私の不機嫌はあっさり治ってしまった。
「ありがとうー。ごちそうさま」
「内緒ですよ」
まだ二回目の来店だけど、なんだかすっかり数家くんとは打ち解けた気がする。
腰が低いから話しやすいのかな。高校の時より断然話してる。
数家くんが戻っていくと、亜結は頬杖をついたまま私をまじまじと見た。