謝罪のプライド
私が所属するヘルプデスクは、社内外のトラブルに対応するいわば駆け込み所のような部署だ。
その下位部署としてコールセンターがあり、コチラは単純にお客様からの発注や苦情処理をマニュアルに沿って対応する。
コールセンターで判別できない障害についてはヘルプデスクに回されてきて対応することになっているので、時々先ほどのお客様のような電話もかかってくるのだ。
すなわち、ヘルプデスクに所属するには、コンピューターの構造からシステム、ネットワーク構築に至るまで幅広い知識を持たなければならない。
そんな凄い部署に何故私や美乃里のようなまだ若い女性社員がいるのか。
それには理由がある。
コールセンターはその収容人数の多さのせいもあって、本社ではなく郊外の分所に置かれている。実際にはセンター長を中心として、独自の指示系統を持っているのだ。
管理はヘルプデスクの一員が兼ねるのだけれど、その距離もあって連絡は主に電話になる。
ヘルプデスクが男性主体であるのに対し、コールセンターは女性が主だ。それ故、連携が取りづらく、コールセンターの本音も内情も男性では聞き出しづらいという実情があった。
そんな経緯から、社の上層部は女性のヘルプデスク要員を育てようとしてきたのだ。
それに抜擢されたのが三年前の私。
まだ新人に毛が生えた程度だったけれど、人材と育てようと躍起になっていた会社は私を優遇してくれた。
優先的に研修に参加させてもらい、各部署で一ヶ月ずつ実習もさせてもらった。お陰で人脈も広がり、こうした電話での応対だけでも社内の人との意思疎通が容易い。
浩生と出会ったのもその実習の時だ。