謝罪のプライド
まだ暑いのか、上半身はTシャツのままでテレビを付ける。
静かだった室内がにわかにざわついてくる。
もうさっきの話には戻せない。仕方なく残る共通の話題を出した。
「……坂巻さん、どう?」
「んー。昨日言った通り」
「彼女喜んでたよ。浩生、優しくしてるんだ」
「前よりはな」
何を話しかけても、顔はテレビの方ばかりでこっちを向いてくれない。
折角二人でいるのに。
テレビなんか消して。
私だけを見てよ。
言葉で伝えられないのは私も一緒だ。
お腹に溜まった言葉たちを告げたら、嫌われてしまうかもしれないと怖くて。
ねぇ亜結。
どうやったら結婚話なんてできるの。
こんな風に二年を過ごしてしまった後で、今更なんて切り出したらいいか分からない。
「なんだよ、大人しくなって」
「別に」
「不満か?」
それには返事をせずにいると、お義理のようなキスが落ちてくる。
「義務とかならイヤ」
「なんだよ。何ふてくされてるんだ?」
「だって。浩生、私の事ちゃんと見てないもん」
浩生は一瞬変な顔をしたかと思うと、テレビを消した。