謝罪のプライド

まだ暑いのか、上半身はTシャツのままでテレビを付ける。
静かだった室内がにわかにざわついてくる。

もうさっきの話には戻せない。仕方なく残る共通の話題を出した。


「……坂巻さん、どう?」

「んー。昨日言った通り」

「彼女喜んでたよ。浩生、優しくしてるんだ」

「前よりはな」


何を話しかけても、顔はテレビの方ばかりでこっちを向いてくれない。

折角二人でいるのに。
テレビなんか消して。
私だけを見てよ。

言葉で伝えられないのは私も一緒だ。
お腹に溜まった言葉たちを告げたら、嫌われてしまうかもしれないと怖くて。

ねぇ亜結。
どうやったら結婚話なんてできるの。

こんな風に二年を過ごしてしまった後で、今更なんて切り出したらいいか分からない。


「なんだよ、大人しくなって」

「別に」

「不満か?」

それには返事をせずにいると、お義理のようなキスが落ちてくる。


「義務とかならイヤ」

「なんだよ。何ふてくされてるんだ?」

「だって。浩生、私の事ちゃんと見てないもん」


浩生は一瞬変な顔をしたかと思うと、テレビを消した。
< 76 / 218 >

この作品をシェア

pagetop