謝罪のプライド
「お待たせ、初音」
「どうも初めまして。清水です」
「初めまして、新沼です」
きちんとスーツを着こなした清水さんは一言で表すなら実直そう。銀フレームのメガネに整った短髪。全体に濃い系の顔は、今は少しオドオドしているようだ。
「お待たせしました。お通しになります」
数家くんが水とお通しを持ってきたので、まずはビールを頼んだ。その後二人にお伺いを立ててから数家くんおすすめの鍋を注文する。
「いや、俺ドキドキしちゃって。すみません。手に汗が」
何度もおてふきで手を拭きながら、亜結のことを優しい眼差しで見る清水さん。
亜結は苦笑しながら彼の脇腹を叩く。すると嬉しそうに笑う彼。
ああなんか、彼なら大丈夫よ。
じっくり話さなくてもそう思えた。
同じ空間に三人でいるのに、清水さんの意識は常に亜結に向かってる。
私と話している時でさえ、だ。
「清水さんは亜結のどこが良かったの?」
「え? いやぁ。もう一目惚れですね。あんなに失礼な出逢い方だったのに、優しく朝食まで作ってくれて」
そのあたりはタヌキに化かされてるな。
亜結は決して優しさで味噌汁を作ったわけじゃなかっただろうけど。