謝罪のプライド
2.謝らない男
ため息に埋もれそうになった一日を終え、最寄り駅の閉店間際のスーパーに入った。
精神的には大分疲れたし、いつもなら割引になったお惣菜を買うところだ。
でも、今日は浩生が来る。
付き合いは二年ほどになる私たちだけど、彼が来る日は必ずちゃんとした夕飯を作って迎えている。
自分で決めた決まりを守るべく、私は惣菜ではなく材料を買った。
ご飯を炊いている間にお湯を沸かし、おひたしと味噌汁を作ってフライパンでブリの照焼を焼く。コンロは一つしかないけど、IHの卓上コンロがあるから、特急で作って四十分でできるはず。
アパートの階段を上りながら計画を立てる。我ながらバッチリ、なんて自画自賛しながら鍵を開けた。
暗い部屋に入って、まずはカーテンを閉める。コンロに水をかけてから着替え。スーツにはちゃんとファブリーズもふりかける。一人で暮らしているとドンドン動きに無駄がなくなってくる。
休まず料理をし始めて三十分。あとちょっとでできるってところで玄関から物音がする。
普通、呼び出しベルは鳴らすものじゃない? って思うけど、浩生は合鍵を渡した日から一度も呼び鈴を押したことはない。
まあ、それが彼らしいといえば彼らしいのだが。