謝罪のプライド
8.甘えられない女
朝から足が重い。
会社についてからもなお足を引きずるように歩く私。
昨日はあの後、浩生から何の連絡もない。
何食わぬ顔をして連絡する事もできなくて、私は悶々と夜を明かした。
“もし電話で報告してくれたら、ただ後輩を労っただけって思うことにしよう”
布団にくるまりながら、考えぬいて出した結論も空回りなだけだ。
送って行ったのかな。
美乃里ってどこに住んでるんだっけ。
送り狼とかしてないよね。でも相手が誘い羊にはなりそうだな。
誘われるがまま据え膳食わぬは……とか言わないよね。
でも浩生の考えは私にはよく分からない。
分からないから、……こんなに不安なんだよ。
はあ、と溜息をつくとタイミング悪く廊下をスキップでも踏みそうな軽やかさで美乃里が走ってくる。
周りに花でも咲いているかのような華やかさ。
溌溂とした雰囲気がますます彼女を綺麗に見せてる。
「あ、新沼さぁん、おはようございますー」
「おはよう。元気ね」
「ハイ! 昨日いいことあったのでぇ。私頑張りますねぇ」
「うん。……頑張って」
私の覇気のない返事にもにっこりと笑う。
今日は相当機嫌がいいな。