謝罪のプライド
そもそも、いいコトって何。
食事に行ったこと自体がいいコト?
それとももっと他にあるの?
「あ、新沼さん」
「ん?」
「九坂さんってステキですね」
ウィンクしてそう言われて、目の前が真っ暗になった。
それってどういう意味ですか。
浩生と何かあったの?
彼は私の彼氏だ。
……なのに私はどうして不安にばかりなるのだろう。
彼のことを信じ切れないのはどうしてなの。
フンフン鼻歌を歌いながら行ってしまう美乃里とは対照的に、私は重苦しい空気を纏いながら一日を過ごした。
*
その夜の九時、ようやくかかってきた電話は待望の浩生……ではなく、見知らぬ番号だった。
いや、見知らぬは嘘だ。
これは多分、まだ登録していない数家くんの番号だろう。
「もしもし?」
昨日鞄にしまったままにしていた、数家くんにもらった伝票メモを取り出す。うん、こんな番号だった。
『新沼さん? ごめんね、こんな遅くに』
「ううん。でも、数家くんこそ仕事じゃないの?」
なんとなく、後ろがざわざわしているし。時間も九時ならまだ忙しいだろう。
仕事着で動き回る数家くんが目に浮かぶようだ。