謝罪のプライド
「そうなの?」
「お前もそうだろ?」
違うよ、決めつけないで。
私は結婚したい。早く安心したい。
亜結みたいに幸せそうに笑いたいのに。
「……まあ、そうかな」
でも私は心とは裏腹に曖昧な言葉を吐く。
いつも言えない。
嫌われるのが怖くて。
浩生に望まれた私じゃなくなるかも知れないって思ったら、いつも怖気づく。
鼻がツーンとして悲しくなる。
でも、本心を言えないのは私だ。
浩生の前では意地でも泣けない。
「私、先にシャワー浴びるわ」
「おー」
私の心情なんか気にも止めていないのか、浩生はあっさり返事するとテレビを付けてそれに見入る。
私は急いでお風呂に入りシャワーを出した。
やっている番組はバラエティらしい。水音に紛れて時折浩生の笑い声がする。
「……浩生の馬鹿」
シャワーの中でなら泣ける。
少しだけ泣いて、早く元気になろう。
浩生は今結婚する気がないってだけで、私とする気がないって言ってる訳じゃない。
無理矢理に自分に言い聞かせて、頭からシャワーを打ち付ける。
なのに、どれだけ理屈を並べても胸の空洞は埋まらなかった。