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午後になると、風は穏やかになったけど、雨は霧のように降り続いている。

町の色は灰色に見え、それが葬式という非日常に合っている。

葬儀場についた私は、入り口に毛筆で書かれた文字を見た。

弘樹と和田の名前が書いてある。

ふたりの死が急にリアルに感じた。


カサをたたんで、中へ入ろうとしたところを、
「あの・・・」
と、呼び止められた。

後ろに立っていたのは、富田知佳だった。

不安げな表情で私を見ている。


「・・・富田さん?」
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