桜雨、ふわり。


森崎くんはそんなあたしを見て、「え?」って不思議そうな顔をした。



「別に裸を描きたいって言ってるわけじゃないよ。
ほら、こっち見て」


伸ばしていた手を掴まれて、膝の上に下ろされる。
そのついでに顎も掴まれて、クイッと上を向かされた。



「目線もこっち」

「…………」



う……。



シャ、シャ、ってなめらかな音がし始めて、森崎くんの顔つきも変わった。
迷いのない鉛筆の動き。

射抜くような、あたしの全部を見透かすような、力強いその視線。

いつもの気だるい森崎くんはどこにもいない。


これが、何度も賞をとる、森崎葉なんだ……。



「……」

「……」



……ドキ……ドキン ドキン ドキン




「あの、森崎くん……」

「……」


ぜ、全然聞こえないみたい。
す、すごい集中力……。


でも……。





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