桜雨、ふわり。
はらり
はらり
それはまるでピンクのシャワー。
この教室から見る景色を、色鮮やかなものに変えている気がした。
桜の木の下には、ピンクの絨毯。
「あれ?」
その花びらに埋もれるようにして何かがあるのに気付いて、あたしは思わず窓から身を乗り出した。
よくよく見ると、それはスケッチブックのようだった。
誰かが忘れて行ったのかな……。
どうしても気になったあたしは、あっこに先に行っててもらうように言って、その場所へと駆け出していた。
はあっ、はあっ
階段も二段飛ばし。
すぐさまその桜の木の下に向かう。
肩でしていた息をなんとか整えて、さっき見たままの姿でそこにあるスケッチブックに手を伸ばした。
ゆっくり拾い上げると、ひらひらと小さな花びらが零れ落ちた。
「誰のだろ……えっと、名前……」
ひっくり返してみても、名前とか特定できそうなものはなくて。
見ても、いいかな?
いいよね、もしかしたら名前わかるかもだし。
ちょっぴりドキドキしながら最初のページを開いた。