桜雨、ふわり。
あの秋の日、森崎くんがいた場所。
あの日の彼が鮮明に現れて
そして消えていく。
あたしの手をとって、
「会いに来てよ」って。
そう言った森崎くん。
彼のはにかんだ笑顔が宝物で……。
あたしの高校最後の1年は、森崎くんでいっぱいだったな……。
森崎くんは、もう夢に向かってるんだね。
あたしはスッと空を見上げた。
春はもうすぐ。
見上げた先の桜の花は、その蕾を膨らませ、まだ来ぬ春を待ちわびていた。