桜雨、ふわり。
あたしには、絵心なんてものは全くない。
美術だって、どちらかと言うと工作の方が得意だし絵を描くなんて事になれば、まずどこから手を付けていいのか悩むくらいだ。
でも。
そんなあたしでも、素直に「凄い」、そう思える絵がそこには描かれていた。
色鉛筆で描かれているんだろうか。
とても淡いタッチで、ピンク色の世界が広がっていた。
その絵を見ていると、その中に物語が生まれて行くような、そんな気さえ感じて……。
あたしは時間も忘れて見つめていた。
その時だった。
ジャリって砂を踏む音に、ハッと顔を上げた。
桜の花びらの雨が、視界を遮って。
その向こうに見えたのは……。