桜雨、ふわり。
思い返していると、突然唇にチュッと口づけられた。
「!!!?」
ギョッとして、顔に体中の熱が集まったみたいにアツくなる。
「も、ももも、も、も、ッ……!!?」
かっこ悪いけど、動揺しまくりのあたし。
そんなあたしに、森崎くんは可笑しそうに肩を揺らすと。
その顔をグッと寄せた。
「でも、これでやっと完成出来る」
「え、か、完成?」
「うん。 これで……」
「森崎く……」
あたしの言葉は、最後まで言わせてもらえなかった。
後から聞いた話だと、森崎くんは単身パリの専門学校に留学していて。
あたしが怖くなって逃げたあの日、それを伝えようとしてくれてたんだって。
それから。
衛圄(えいご)さんっ言うのは森崎くんのお父さんで。
いつか、自分の作品だけの展示会を開くのが、森崎くんの夢だって教えてくれた。