桜雨、ふわり。
だから、あの絵は、森崎くんのデビュー第一号、なんだって。
木目の額縁の中。
淡いタッチで描かれている、満開の桜。
そして、その中で微笑んでる、あたし。
【桜雨、ふわり。】
そして、その下にはサブタイトルもつけられていた。
それは……。
〜あの場所で、君を待ってる〜
これから、どんなことがあっても。
あたし、きっと森崎くんを探し出してみせるよ?
だから、きっと迷わずに、前だけを見ていてね?
ふたりは、始まったばかりなんだから。
―――ふわり ふわり
舞い落ちる桜の花びら。
それはまるで、この淡い恋心のようにとどまる事なく降ってくる。
手を差し出せば、すぐに触れる事の出来るそれは。
あの頃の、そしてこれからのあたし達のようだ。
春は、大好き。
あたしと彼の、特別な季節なんだもの。
fin.