偽悪者


 髪を金色に染めた。
 最初は頭皮が炙られた様に熱くなって慄いたが、“如何にも頭の悪そうな女子”が鏡の向こうに見えた途端、全く気にならなくなった。その足で工業用品店に向かう。
 デザインもへったくれもない作業帽を買い、タグも切らずに被ってみる。閉店したレストランの張りガラスに反射する姿は、首を持ち上げないと見れなかった。


「ばっちこーい!」

 帰り道。高校の裏門前を通ると威勢の良い声が聞こえてきて、ふと足を止める。
 春休みだというのに汗垂らして泥塗れで練習するのは野球部だ。今も、サードの男子が地面を蹴っ飛んでノックに食らいついた。

 この学校は普通より少し下のレベルだ。入試も150あれば十分に通過出来るぐらいだし、目の前の野球部も甲子園なんて夢のまた夢だろう。
< 2 / 2 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

公開作品はありません

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop