白の離宮
結局,ルナはソフィアと入れ替わるということになってしまった。夕方,ルナが離宮に帰ってきた直後にソフィア付きの女官・ユリアが衣装一式を届けにきた。衣装は純白と淡い青色のグラデーションのドレス,チュールのマント,真珠とアクアマリンのマント留め2つ,靴,ティアラ,アクアマリンのイヤリングとネックレス,髪留めである。
ルナは大きなため息を1つついた。苦痛なのだ。ユリジュスに会うのが。なにが悲しくて,妹姫のフリして,妹姫の婚約者と会食に参加する必要があるのか。
その婚約者とやらは,自分が片想いしている相手だし…。
たまらなくなって,ルナは部屋を飛び出した。向かうはリアンの部屋。どうしようもなく辛い時はいつも,リアンの部屋へいく。それが,ルナの少女時代からのクセの1つであった。
ルナはリアンの部屋へ入ると,リアンの背中に抱きついた。背中に顔を埋めると,リアンに抱きつく腕に力をこめた。
「ル…ルナ?」
戸惑うリアン。あたりまえだ。昨夜,眠るルナに手を出しかけて,もうルナに触れないと心に決めたのだが…。しかし,ソレとコレでは違うようだ。リアンは,振り向いてルナを触れる程度に抱きしめる。
「女官のユリアが急ぎ支度をするようにとの催促が来ているよ。さ,はやく支度をしないと」
リアンがルナを抱きしめていた腕を解くと,ルナの顔をのぞきこむ。ルナは首を小さく横にふった。
「嫌です。王宮になど行きたくありません。私はソフィア王女の護衛官ではあるけれど,影武者ではありません!!」
「ルナ…。嫌なのはわかるけれど,ある意味1つの任務のはずだよ?武官はどんな時でも,感情で行動するものではない!」
「あ…。そうだった…わ,私は…」
揺れに揺れている心を抑えているであろうルナの肩を抱いて,部屋へ向かった。
「エレオノーラ女官長!急いでルナ王女のお支度を!王女は今夜,ソフィア王女さまの極秘のご命令で王宮へ伺侯なさる」
「わかりました。さぁ,お姫さま!すぐにお衣装にお召し替えをいたしましょう。マルグリットにシャロン!手伝ってちょうだい」
エレオノーラはマルグリットとシャロンと共にルナの身支度をはじめた。
美しく盛装したルナはソフィア王女そっくりだ。まぁ,もともと双子なのだから似ているのは当然なのだが。いつもの冷たい雰囲気はなくなり,かわりに穏やかかつ華やかな雰囲気を醸し出していた。
あとは,人目につかないようにソフィア王女の部屋へ向かうのみ。馬で向かえば,人目につくので,ボートで王宮へ向かった。リアンに支えられながら,ソフィア王女の部屋へ入る。
部屋の奥で,ユリア女官長がルナの訪れを待っていた。
「ルナさま,はやくこちらへ。人魚の間で国王陛下と王后陛下がユリジュスさまとお待ちです」
ルナの手をとり,急いで人魚の間へ向かう。
「さぁ,ここからはソフィア王女さまと呼ばせていただきますわ。」
人魚の間では,穏やかな微笑を浮かべるアクア王妃に,ユリジュスと談笑しているプレアデス国王の姿。ルナの姿をみとめた王妃は,
「ソフィア,遅かったですね。もう今か今かと待っていたのですよ。はやくこちらへいらっしゃい」
「はい。お母さま」
アクア王妃に促され着席した。いつもなら『王后陛下』または『王妃さま』と呼ぶことしか許されない存在の実の母を,はじめて『お母さま』と呼んだ。18年前,隠された存在として白の離宮に移されていなければ,『お母さま』とあたりまえのように呼んでいたのだろう。悔しさと惨めさと寂しさとが相まって,扇子をきつく握りしめた。爪が手のひらに食い込んで紫色に変化している。
このような事になったのも,実の父親・プレアデス国王のせいなのかも知れない。
ルナはユリジュスと談笑しているプレアデス国王を冷ややかな瞳でみつめていた。
ルナは大きなため息を1つついた。苦痛なのだ。ユリジュスに会うのが。なにが悲しくて,妹姫のフリして,妹姫の婚約者と会食に参加する必要があるのか。
その婚約者とやらは,自分が片想いしている相手だし…。
たまらなくなって,ルナは部屋を飛び出した。向かうはリアンの部屋。どうしようもなく辛い時はいつも,リアンの部屋へいく。それが,ルナの少女時代からのクセの1つであった。
ルナはリアンの部屋へ入ると,リアンの背中に抱きついた。背中に顔を埋めると,リアンに抱きつく腕に力をこめた。
「ル…ルナ?」
戸惑うリアン。あたりまえだ。昨夜,眠るルナに手を出しかけて,もうルナに触れないと心に決めたのだが…。しかし,ソレとコレでは違うようだ。リアンは,振り向いてルナを触れる程度に抱きしめる。
「女官のユリアが急ぎ支度をするようにとの催促が来ているよ。さ,はやく支度をしないと」
リアンがルナを抱きしめていた腕を解くと,ルナの顔をのぞきこむ。ルナは首を小さく横にふった。
「嫌です。王宮になど行きたくありません。私はソフィア王女の護衛官ではあるけれど,影武者ではありません!!」
「ルナ…。嫌なのはわかるけれど,ある意味1つの任務のはずだよ?武官はどんな時でも,感情で行動するものではない!」
「あ…。そうだった…わ,私は…」
揺れに揺れている心を抑えているであろうルナの肩を抱いて,部屋へ向かった。
「エレオノーラ女官長!急いでルナ王女のお支度を!王女は今夜,ソフィア王女さまの極秘のご命令で王宮へ伺侯なさる」
「わかりました。さぁ,お姫さま!すぐにお衣装にお召し替えをいたしましょう。マルグリットにシャロン!手伝ってちょうだい」
エレオノーラはマルグリットとシャロンと共にルナの身支度をはじめた。
美しく盛装したルナはソフィア王女そっくりだ。まぁ,もともと双子なのだから似ているのは当然なのだが。いつもの冷たい雰囲気はなくなり,かわりに穏やかかつ華やかな雰囲気を醸し出していた。
あとは,人目につかないようにソフィア王女の部屋へ向かうのみ。馬で向かえば,人目につくので,ボートで王宮へ向かった。リアンに支えられながら,ソフィア王女の部屋へ入る。
部屋の奥で,ユリア女官長がルナの訪れを待っていた。
「ルナさま,はやくこちらへ。人魚の間で国王陛下と王后陛下がユリジュスさまとお待ちです」
ルナの手をとり,急いで人魚の間へ向かう。
「さぁ,ここからはソフィア王女さまと呼ばせていただきますわ。」
人魚の間では,穏やかな微笑を浮かべるアクア王妃に,ユリジュスと談笑しているプレアデス国王の姿。ルナの姿をみとめた王妃は,
「ソフィア,遅かったですね。もう今か今かと待っていたのですよ。はやくこちらへいらっしゃい」
「はい。お母さま」
アクア王妃に促され着席した。いつもなら『王后陛下』または『王妃さま』と呼ぶことしか許されない存在の実の母を,はじめて『お母さま』と呼んだ。18年前,隠された存在として白の離宮に移されていなければ,『お母さま』とあたりまえのように呼んでいたのだろう。悔しさと惨めさと寂しさとが相まって,扇子をきつく握りしめた。爪が手のひらに食い込んで紫色に変化している。
このような事になったのも,実の父親・プレアデス国王のせいなのかも知れない。
ルナはユリジュスと談笑しているプレアデス国王を冷ややかな瞳でみつめていた。