白の離宮
心が揺れて食事どころではない。片想いしている相手を目の前に,私はなぜ妹姫のフリをしなければいけないの!?私はルナ王女よ!!国王が生まれてくる子ども(予定?願望?)の話をユリジュスとしている。誰とだれが子どもをつくると言うのか。意味がわからない。

食事もそこそこにルナは,ソフィアの部屋に戻った。テラスの水辺にリアンがボートと共にルナの帰りを待っていた。ルナはボートに乗り込むと,

「リアン,はやくボートを出してちょうだい!はやく離宮に帰りたい!!」

とリアンに命令した。やはり,行かせるべきではなかったと思いながらも,リアンは愛する女を離宮へ帰すべくボートを漕いだ。


…アデーナ神殿周辺の浜辺…

「ねぇ,オルタンス。なんて素敵なんでしょう!見て!あの白い砂!宝石のようにキラキラと輝いて!」

ソフィアは浜辺に膝をつき,砂を手に取る。真っ白な砂は月の光があたってキラキラと輝いている。エメラルドブルーの透き通るような海では,人魚たちがイルカと共に泳いでいる。

「王女さま,そろそろ王宮に戻ったほうがよろしいんじゃなくて?今夜はお付きの人もいないのですし…」

オルタンスは心配そうにソフィアを見る。

「そうですわ。オルタンスの言う通りですわ。アデーナ神殿周辺はあまり人気がございません。王女さまにもしもの事があったら,ルナの責任になってしまいますわ」

カメリアもソフィアに王宮に帰ることを促す。

「わかったわ…。王宮に帰ります。」

しぶしぶと言った感じで,ソフィアは王宮に帰る決心をした。

‐さようなら。アデーナ神殿。私はもうここに来ることはないでしょう。ひとときの自由をありがとう。‐

ソフィアはわずかな自由の時間に別れを告げた。


…白の離宮・ルナの居間…
ルナはソフィア王女の姿のまま,長椅子に突っ伏していた。涙が止まらないのだ。ユリジュスとソフィア王女の婚約話が決まりかけていると言うことは聞いていたが…まさか,そこまで話が進んでいたとは思ってもいなかった。
‐プレアデス国王…。あなたという方は娘である私の存在を無視して…。‐
ルナの瞳は屈辱の炎で燃えていた。許せないという気持ち,好きだという気持ちが伝わらない。ルナはこの気持ちの持って行き場をなくしてしまっていた。
< 12 / 14 >

この作品をシェア

pagetop