白の離宮
アクア王妃の居間に王妃の腹心・イサベル女官長が書状の入った箱を持って入室した。
「王妃さま,エレオノーラさまから書状が届きました!至急のお知らせ故,すぐにお返事をともうしております」

「エレオノーラから…?どうしたのかしら。もしやルナ王女になにか…?」

瑠璃色の箱を開け,書状を見る。その書状にはルナ王女の士官学校入学希望の主旨が書かれていた。

「そんな…!!ルナ王女が軍人になりたいなんて…!正統な国王陛下のお子でありながら…。」

泣きながら書状をイサベル女官長に渡した。
「王妃さま…。ルナ王女様はエレオノーラさまがいくらお止めしてもお耳を貸さなかったようです」

「国王陛下になんと申し上げれば良いのでしょう…?王女が軍人を希望しているなんて…。」

「王妃さま…。」

イサベル女官長はアクア王妃の足元に寄り,そっと手を握った。15歳で王家に嫁ぐ前からエレオノーラとともに仕えていたのだ。アクア王妃の苦悩は手に取るようにわかる。ルナ王女を手放した時の悲しみ,ルナ王女への気遣い,心配…。手放した時からルナ王女を思わなかった日は1日だってなかった。

「とりあえず,国王陛下に相談すると,伝えてください。私も考えてみます」

王妃直筆の書状を瑠璃色の箱に納め,イサベル女官長に託した。

「イサベル!支度を手伝ってちょうだい。国王陛下のお部屋へ行きます。ルナ王女の件についてお話しなければ!」

王妃は長椅子から立ち上がり,鏡の前に移動した。化粧係の侍女が化粧を施しているあいだ,髪結い係の侍女が王妃の艶のあるブルーブラックの髪を結い上げ,ティアラに髪飾りを飾る。衣装を着付け,扇子を手にイサベル女官長を伴い,王宮の政務の間へ向かった。
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