白の離宮
今日はルナ王女がソフィア王女護衛官として,王宮に伺候する日…。隠された存在・ルナ王女としてではなく,軍人・ルナとして,プレアデス国王とアクア王妃の前にでるのだ。

「お嬢様…。よくお似合いですわ…。アクア王妃様からお嬢様のお世話を頼まれて14年間,とうとう王妃様はお嬢様のところへお顔をお出しになりませんでした。」

「いいのよ。ばあや。アクア王妃もソフィア王女に付きっきりなんですもの。それに,プレアデス国王との公務もおありだし…」

腰まである艶やかなブルーブラックの髪を高く結い上げ銀の髪飾りで髪を止める。
耳には,アクア王妃が密かに贈ったサファイアの耳飾りがついている。軍人になっても,女性らしさを失わないようにと…。
腰にはサーベル。柄の部分にはアクアマリンとダイヤモンドが控えめにあしらわれている。

「お嬢様,お気をつけてくださいませね。王宮の陰謀に捲き込まれませんように…」

「わかっているわ。ばあや心配しないで。私は陰謀に捲き込まれるほどバカではないわ」

ルナはそう言って,白馬に跨がった。ルナ護衛の従僕・リアンも黒い馬に跨がった。

「リアン,行くわよ」

「はっ」

2つ年上のリアンを伴い,王宮へ向かった。エレオノーラは心配そうに2人の後ろ姿を見送った。
アクア王妃様…。ルナ王女様がそちらにおいでになられます…。どうか王女様を大切になさってくださいませね…。


‐とうとうこの日が来た…。もう,あと戻りはできない。ありがとう…エレオノーラ。あなたのお陰で私はこうして生きてこられたわ。私はこれから始まる惨めな生活を乗り越えて行けそうだわ‐



…ソフィア王女の居間…

「ねぇ,ローサ。今日,私付きの護衛官が王宮に伺候するのよね?」

「ええ王女様。なんでも見目麗しい女士官だそうですわ〜。あぁ,王女様はこの世の美しい物をなんでもお手に入れられる。なんて幸福な方!いづれはなんでも恵まれた王妃様におなりですわ」

ソフィアに衣装を着付けながらローサは話続ける。
しかし,ソフィアはこれから伺候するというルナのことで頭がいっぱいだった。

「ソフィア王女様!王女様付きの護衛官がやって参りました。どうぞ,女神の間へおいでにくださいませ。国王陛下と王后陛下がお待ちかねです」

侍女のフローラがルナの伺候をソフィアに告げた。2人の王女の数奇な絆を結びつけようとする瞬間だった。

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