白の離宮
…女神の間…
ソフィアが部屋に来た時には,ルナと国王王后両陛下の謁見が終わっていた。両親の前に方膝つきひざまついている…ブルーブラックの髪の女性武官。

‐この人が…私の護衛官。あの髪の色私やお母さまにそっくり…。

‐この方が…ソフィア王女…。私にそっくり…。アクア王妃…私のお母さま…。この方も私にそっくり…。

「ルナ,この娘が私の娘・ソフィアです。ソフィア,この方がルナ護衛官です。そして,ソフィア王女付きの近衛兵の指揮官です。なにかあったら,このルナに声をお掛けなさい」

「はい。お母さま」



「王女様,あのルナという護衛官…王女様や王妃様にそっくりでしたわ!いったいどういうことでしょう!そりゃあこの世に自分そっくりは3人いるとは言いますけれど。でもあれは違いますわ!!血の繋がりがあるとしか思えませんもの」

「お止めなさいシシィ。ルナ護衛官に失礼よ。あの方は確かに白の離宮に住まわっている貴人です。もしかしたら,大貴族の末裔かもしれないじゃない。もし,お父さま是非にとお望みになられれば,嫌でも王族の一員。血の繋がりがあったとしたら…私のお姉さまか妹姫にあたるわね」

ソフィアの言葉にアクア王妃は顔が強張った。

‐ルナ…。わたくしの娘…正統な王家の生まれなのに姉のあなたは護衛官,妹のソフィアは王女。第一王位継承者の…。今すぐにでも,親子の名乗りをあげてわたくしの側に寄せたい…。

ルナに贈ったサファイアの耳飾りを見てからずっと心が痛んでいたのだ。
一方ルナも…

‐アクア王妃…私のお母さま…。美しく,上品な方だった…。ソフィア王女…私の妹…。姉の私が隠された存在だなんて…。どうして!?どうして私が隠された存在なの!?第一王位継承者は私だったはずなのに…!こうやって惨めになるのは目に見えているはずなのに…傷口を開いて掻き回すように軍隊に入隊したけれど…。私にはやはり無理だったのかもしれない。

月光を浴びながら,やるせない思いに悩みながら,ルナはアクア王妃とソフィア王女に想いを馳せた。



2人の苦悩など知らぬようにソフィアは男装の麗人のルナに熱い眼差しを送っていた。しかし,その幸せな片想いはそう長く続かない。だが,いまのソフィアには知るよしもなかった…。


やがて,2年が過ぎ2人は16歳になった。ソフィア王女にユリジュス将軍との縁談が持ち込まれた。ユリジュスの才能に目をつけたプレアデス国王の計らいからだった。
そしてルナもまた…

‐ユリジュス将軍…私は気が付けば,彼をいつも目で追っている。なぜ…?見ているだけで胸が締め付けられて…苦しい。わからない。わからない!自分の気持ちが…

リアンにはわかっていた。ルナが将軍に片想いをしていたのは…。ただ,認めたくないのだ。だってリアンはずっと前からルナしか見ていないから…。
リアンは震える心を抑えて,ルナのいるソフィア王女の居間の隅に静かに控えていた。
ルナの涼やかな横顔をみつめながら…。
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