白の離宮
イサベル女官長は朝早くから,ソフィア王女の命により内密に王女の部屋に呼ばれた。
‐アクア王妃さま付きの私に,ソフィア王女さまは何のご用があるのかしら?もしかしたら…ルナ王女さまの件についてかしら…?‐
イサベルはソフィア王女の姿をみとめると,品の良いお辞儀をする。そして,挨拶をしようとして,ソフィア王女がそれを制する。
「よくきてくださいました。イサベル女官長。私,あなたに聞きたいことがあってお呼びしました」
「王女さま…お聞きしたいこととは何でございましょう?」
「私に双子のお姉さまがいらっしゃるって本当なのですか?」
「ソフィア王女さまいきなりどうなさいまして?双子のお姉さまだなんて…そんなことはございませんわ」
イサベルはやんわりと否定する。しかし,ソフィア王女はさらに問い詰める
「私,お父さまとお母さまが話しているところを聞いてしまいましたの。『わたくしたちの娘はソフィア1人ではない』とお母さまはお父さまにおっしゃっていたわ!!どういうつもり!?答えなさい!」
美しい眉を吊り上げ,イサベルに問い詰める。
「いいえ…。お教えするわけには参りませぬ。この件は,コスモ王国の秘事でごさいますゆえ,ソフィア王女さまがいずれ王妃さままたは女王さまになられてからお教えいたします」
「なんですって…!!もういいわ…。さがってちょうだい」
ソフィア王女は額に手をあて,イサベルを退室させた。なにかわかりそうでわからないのだ。でも,自分と血の繋がりのある人間の存在が見え隠れしている。わかりそうでわからない。見えかけているけれど見えない。手をのばし,掴もうとすると,霧のように消えてしまう。
‐いったい誰のことなのだろう…?イサベル女官長だったら教えてくれると思っていたのに…。イサベル女官長ってお母さまより口が堅いわね。……あら!?ルナだわ!!あぁ…いつ見ても素敵だわぁ…。あれで本当の男性だったら私,押し掛けてでも妻になるわ!‐
ルナが双子の姉または妹なのでは?と疑いながらも,ルナの姿を見てしまうとそんな疑いもどこかへ飛んで行ってしまうようだ。
まったく本当にのんきなお姫さまだ。
もう1人,ルナに熱い視線を送っている人間1人。リアンである。リアンもルナが双子の王女の1人であることに薄々気がついていた。コスモ王国の秘事であるルナの存在。プロフィール上では貴族の令嬢ということになってはいる。しかし,アクア王妃が母子の名乗りをあげれば,王女として王宮に召されてしまうだろう。そうしたら,完全に手の届かない存在になってしまう。想いを伝えたい何度もそう思った。でも,それが許されない。だから余計に苦しい。
…白の離宮…
リアンは震える手で,ワインのボトルに眠り薬を入れた。豪奢な細工の施されたガラスのボトルは蝋燭の火の光でキラキラと輝いている。許されないことだと知りながら,行動に出てしまった。
まだ震えている。これがエレオノーラに知れてしまったら…アクア王妃に知れてしまったら…すべてが終わる。コスモ王国の秘事・隠された王女に手を出した男のレッテルを貼られてしまうだろう。でも,今がチャンスかもしれないという思いもある。
不安と緊張に揺れる胸を抑えてルナの部屋へ向かった。
‐アクア王妃さま付きの私に,ソフィア王女さまは何のご用があるのかしら?もしかしたら…ルナ王女さまの件についてかしら…?‐
イサベルはソフィア王女の姿をみとめると,品の良いお辞儀をする。そして,挨拶をしようとして,ソフィア王女がそれを制する。
「よくきてくださいました。イサベル女官長。私,あなたに聞きたいことがあってお呼びしました」
「王女さま…お聞きしたいこととは何でございましょう?」
「私に双子のお姉さまがいらっしゃるって本当なのですか?」
「ソフィア王女さまいきなりどうなさいまして?双子のお姉さまだなんて…そんなことはございませんわ」
イサベルはやんわりと否定する。しかし,ソフィア王女はさらに問い詰める
「私,お父さまとお母さまが話しているところを聞いてしまいましたの。『わたくしたちの娘はソフィア1人ではない』とお母さまはお父さまにおっしゃっていたわ!!どういうつもり!?答えなさい!」
美しい眉を吊り上げ,イサベルに問い詰める。
「いいえ…。お教えするわけには参りませぬ。この件は,コスモ王国の秘事でごさいますゆえ,ソフィア王女さまがいずれ王妃さままたは女王さまになられてからお教えいたします」
「なんですって…!!もういいわ…。さがってちょうだい」
ソフィア王女は額に手をあて,イサベルを退室させた。なにかわかりそうでわからないのだ。でも,自分と血の繋がりのある人間の存在が見え隠れしている。わかりそうでわからない。見えかけているけれど見えない。手をのばし,掴もうとすると,霧のように消えてしまう。
‐いったい誰のことなのだろう…?イサベル女官長だったら教えてくれると思っていたのに…。イサベル女官長ってお母さまより口が堅いわね。……あら!?ルナだわ!!あぁ…いつ見ても素敵だわぁ…。あれで本当の男性だったら私,押し掛けてでも妻になるわ!‐
ルナが双子の姉または妹なのでは?と疑いながらも,ルナの姿を見てしまうとそんな疑いもどこかへ飛んで行ってしまうようだ。
まったく本当にのんきなお姫さまだ。
もう1人,ルナに熱い視線を送っている人間1人。リアンである。リアンもルナが双子の王女の1人であることに薄々気がついていた。コスモ王国の秘事であるルナの存在。プロフィール上では貴族の令嬢ということになってはいる。しかし,アクア王妃が母子の名乗りをあげれば,王女として王宮に召されてしまうだろう。そうしたら,完全に手の届かない存在になってしまう。想いを伝えたい何度もそう思った。でも,それが許されない。だから余計に苦しい。
…白の離宮…
リアンは震える手で,ワインのボトルに眠り薬を入れた。豪奢な細工の施されたガラスのボトルは蝋燭の火の光でキラキラと輝いている。許されないことだと知りながら,行動に出てしまった。
まだ震えている。これがエレオノーラに知れてしまったら…アクア王妃に知れてしまったら…すべてが終わる。コスモ王国の秘事・隠された王女に手を出した男のレッテルを貼られてしまうだろう。でも,今がチャンスかもしれないという思いもある。
不安と緊張に揺れる胸を抑えてルナの部屋へ向かった。