僕のonly princess
「ねぇ、薫は何をそんなに悩んでいるの?私達のことじゃないでしょ?」
佐知の声に顔を上げると、ちゃんと確信を持っている顔をした佐知と目が合った。
だから俺もしっかりと頷いて、
「違うよ」
とはっきりと言った。
「ここ2、3週間、あなたかなり様子がおかしいわ。すごく疲れてるようだり、顔色もよくないし、日に日にやつれていってる」
やつれてる……とまで言われるとは、ちょっと可笑しくて自嘲気味な笑みが漏れた。
「なんでもな……」
「そんなわけないでしょ。あなた私がいったいどれくらいの時間、あなたの姉をやってると思ってるの?私に隠し事なんて、できるわけないでしょ」
「………」
思いの外、強い口調で言われて俺は目を丸くして佐知を見た。
佐知はギュッと眉を寄せて怖い顔で俺を睨んでいる。
忘れていたけど、佐知は色んな意味で厳しくて察しのいい姉だったんだ。
もちろんすごく優しいし、小さい頃からいつも俺のことを弟として包んでくれた。
だけど俺が間違ったことをしたり、周りに迷惑をかけたりするとかなりきつく叱られもした。
両親より、姉である佐知の方が俺をきちんと叱ってくれた。
それに俺が周りに甘えすぎた時もちゃんと注意してくれたし。
俺が友達と喧嘩した時も俺からは何も言わないのに、慰めてくれた。
俺との距離を取っていたあの間でさえ、それは時々あって。
ホント、すっかり忘れていたけど佐知に隠し事なんて出来た試しがない。
「はぁ……ごめん」
俺は諦めてもう一度、大きな溜息を吐き出すと、重たい心を一つ一つ解くように佐知に話し始めた。